インタビュー
森本 精造
出身地:飯塚市(旧筑穂町)
/ 生年月日:昭和16年11月19日
横溝ご夫妻の思いを強く受け止め、
学生を支援していきたい。
昭和40年に設立された横溝奨学会。
57年もの長きにわたり、奨学金を利用して勉学に励む若者を支援してきました。その創設者である、横溝米吉さん・キクさんご夫婦、娘さんのチトセさん、お孫さんの柳川淑子さんの想いなどを、飯塚市の教育長を務められた後、現在は一般財団法人横溝奨学会の理事長をされている森本精造さんにお話をお聞きしました。
- 横溝奨学会を設立した横溝さんは、
どのような方だったのでしょうか? -
森本氏
昭和39年(1964年)10月29日の西日本新聞に、横溝奨学会設立について残されています。その中に「有能な人材の育成に使ってほしい」「一代で築いた財産は一代で社会事業に使おう」と、500万円相当の株と20万円の現金を旧穂波町に寄付され、この申し出が奨学金制度設立に結びついたということが載っています。私は同じ昭和39年(1964年)旧穂波町立中学校の新規採用の教員でした。その当時初任給は1万3千円程度でしたからすごい金額です。学校で横溝さんのことが話題になったことを覚えていますが詳しくは知りませんでした。当時は、エネルギー革命により、筑豊の炭鉱のほとんどが閉山に追い込まれていく時期でした。中学校でも高校でも、貧しいが故に進学したくてもできない子どもたちが何人もいました。奥さんと娘さんを亡くされた横溝米吉さんはそんな当時の現実を、貧しく学校へ行けなかった自分と重ね合わせられ奨学金制度設立を考えられたのではないでしょうか。
- 理事長が横溝奨学会に携わるようになったきっかけや
理由を教えてください。 -
森本氏
私が平成12年10月(2000年)、旧穂波町の教育長として勤めるようになった時、奨学会の事務局が穂波町教育委員会にあり、奨学会の常務理事を引き受けました。横溝さんのことを詳しく知ったのはその時からです。改めて新聞を読み横溝米吉・キクさんご夫婦の想像を超えるご努力、貧しくて進学できない子どもたちのために私財を投じられた熱い思い、横溝奨学会設立の経緯等を知り、地元にこんなどえらい方がおられたのかと驚いたことを思い出します。
その当時、横溝ご夫婦の娘さん(井上さん)が財団の評議員でした。そして現在、その井上さんの娘さんである柳川さん(横溝ご夫婦の孫)が一般財団法人横溝奨学会の理事をされています。柳川さんは小さい頃、祖父母の横溝ご夫婦と共に過ごされています。平成27年6月の奨学会の役員会の中で、柳川さんから、「設立50周年を迎えて」のご挨拶をいただきました。その中で横溝米吉さんは旧田主丸町出身で10歳ころから丁稚奉公に出て家計を支えたこと、キクさん(旧穂波町出身)と結婚し、炭鉱の坑内で米吉が先ヤマ、キクが後ヤマになり夫婦で石炭を堀って働いたこと、炭鉱や日用雑貨店の仕事道具だったツルハシや銭枡は我が家の家宝として床の間に飾っていることなどの話を聞き、改めて理事長として何としてでも残していかなければという思いでいっぱいになりました。
- 横溝奨学会を利用された方は、
どのくらいいらっしゃるのでしょうか? -
森本氏
令和2年度で奨学会設立後55年を継過していますが、これまでに104名の学生に奨学金を貸与しています。
- 横溝奨学会はどのように
運営をしているのでしょうか? -
森本氏
平成26年(2014年)の法人法の改正により、一般財団法人横溝奨学会と名称を変え現在に至っています。運営は東京電力株と九州電力株の配当金と貸与してきた奨学金の返済金で行っています。ピーク時は両電力会社の株価が1億円を超えていましたので、配当金も多頼で財政的には余裕がありましたが、平成23年(2011年)の東日本大震災に伴う原発事故の影響で株価が大幅に下落し、配当金もしばらく0円の年もあり、PR不足もあると反省していますが、応募件数ゼロの年が出てくるなど、非常に厳しい運営状況になってきています。一方で近隣自治体などでの給付型奨学金も増えてきつつあり、現在理事会・評議員会の中で給付型への移行について制度改正の検討をすすめているところです。今後の課題として、現在の貸与型から給付型に移行するには、純資産が減少しているため制度変更が難しいことから、何らかの方法で純資産を増資させる方策を導き出し給付型に変えていきたいと考えています。
- 横溝奨学会を利用するための
対象や条件はありますか? -
森本氏
設立当初は旧穂波町の高校生と大学生が対象でしたが、現在は一般財団法人横溝奨学会定款の目的の中に飯塚市に住所を有する者で、大学に在学中の学生が対象になっています。また向学心に富み学業、人物ともに優秀かつ健康であって、学資の支弁困難なものと認められる者に貸与するとなっています。横溝さんの意思がしっかり受け止められた対象と条件になっていると思っています。応募があれば選考委員会で書類審査を行い、奨学生を決定しています。
- どのような方に横溝奨学会を
利用していただきたいとお考えですか? -
森本氏
奨学会の目的にも掲げていますように、貧しさが故に進学を断念している学生に、横溝ご夫婦の思いを伝え、理解していただいた上で奨学金を貸与していきたいと考えています。
- 飯塚市で学ぶ学生に向けて
メッセージをお願いします。 -
森本氏
2020年、安永常務理事と二人で柳川さんの家を訪問しました。床の間にはツルハシと銭枡が置いてあるのを見て、改めて横溝さんご夫婦のご労苦と思いを、残された家族の皆さんでしっかり守り継がれていることを再認識しました。横溝奨学会は、55年前、横溝米吉・キクさんから寄贈された貴重なお金と心の財産です。お二人の思いを強く受け止め、貧しいが故に勉学をあきらめなければならない飯塚市内の大学生に、横溝奨学会からの財政的支援があることを伝え頑張って欲しいと願っています。現在、新型コロナウイルス感染症が新たな貧困を作り出しています。改めて横溝奨学会の存在を伝え希望者を募りたいと思っています。